ビキニの悲鳴

65年/米 監督・出演:ジョン・ホール 出演:アーノルド・レッシング、ワカメ海獣ベロベロドン


 私はサーファーが嫌いだ。何故なら毎年日焼けした半裸で夏をエンジョイし、太陽に光る波しぶきをバックに若さの衝動と欲望にまかせたひと夏の恋物語などもタップリ堪能している(であろう)からだ。もう憎んでいると言ってもいい。ついでに栃木には海がない。そんな私の心に南アルプス天然水のように沁み込んだのがこの一本。

 オープニング。とにかく延々とヌルいサーフ・ソング(ちなみに音楽担当はフランク・シナトラの息子)をバックにニヤけた野郎とズベ公どもがサーフィンしたりゴーゴー踊ったりサーフィンしたりゴーゴー踊ったりサーフィンしたり…………ムニャムニャ、お母さんもう食べられないよ…………というわけで、気が付いたときにはもう第一の犠牲者が出ていたので、冒頭がどういうストーリー展開だったのかまるで分かりません。ごめんなさい。

 とりあえずキャーキャー言ってる声で目が覚めたのですが、その時私の目に飛び込んで来たものがワカメ海獣ベロベロドン(正式名称があったかも知れないが覚えてないので以下略)でした。えーと、ポンキッキのムックおりますよね。彼の体毛をワカメにしたものをご想像下さい。ジャストそれです。材料はどう見ても現地調達。65年の映画という事を考えると、これは画期的に斬新な廃物利用エコロジー怪獣ということになります。地球に優しいクソ映画。

 どうやら殺されたのは主人公サーファーの女。でも主人公、全然気にしないでもう他の女とイチャコラしてるんですよ。どういうの。この主人公の父親というのが真面目な海洋学者で、放蕩息子に頭を痛める毎日。そのくせエロい後妻なんか持っちゃって余計家庭間の問題をややこしくしてるんですが、当然どうでもいい話です。ちなみに主人公には足の悪い彫刻家の友人がおり、そのいかにもオタクな雰囲気から周囲の人にはハブられている模様。主人公の継母に岡惚れしているらしく彼女をモデルに彫刻を作ったりしますが、誰がアンタなんか相手にするもんですかハン!な態度を取られてキレまくり。獣のような呻きを上げて作りたての彫刻をグチャグチャにデストロイしたりします。あ、その前になんか主人公がこの友人にイイフィルムが入ったんだよ……とか言って延々5分くらいサーフィン映像を見せるシーンがあるんですが、それは要するに我々観客も強制的にそれに付き合わされているというわけで、ここでもちょっと寝ました。

 その間にも海辺でハメまくるバカサーファーどもはベロベロドンにガンガン殺されていきます。行け!ベロベロドン! 海辺の平和を守るんだ! 正義の味方ベロベロドンを心から応援する私。しかし様々なエピソードが交錯した結果(寝てましたごめんなさい。どうもお約束的に彫刻家が殺人犯なんじゃ!いややっぱ違った!みたいな遣り取りがあった模様)実はベロベロドンの正体は、主人公の父が息子の放蕩に頭を傷めた(誤植にあらず)挙句、憎きサーファーを殺しまくるため作った着ぐるみだったことが判明! なんてこった、「着ぐるみみたいな怪獣」なんじゃなくて、マジで着ぐるみだったのか! あまりに斬新な予算の誤魔化し方に関心しているうちに、着ぐるみ着たまんまの主人公の父と警察の逃走劇が開始。と思ったら何の余韻もなく着ぐるみパパの車が崖から落っこちてTHE END。はぁそうですか、終わりましたか。

 ちなみにこの追跡→崖から落下・炎上のシーンがめちゃくちゃメリハリのない構成で、ただひたすら闇夜のヘッドライト、黙ってハンドルを握る人物、効果音の繰り返しでなんの盛り上がりもないままチュドーン。ラストカットは炎上する車が投げやりに映っているだけで、登場人物のシメの言葉も何も無し。見ようによっては「バニシング・ポイント」に影響を与えた! とか言えちゃうかも(言わねえよ)。この部分だけならアンディ・ウォーホルの実験映像だよとか言われても信じてしまいそうな前衛的演出です。ていうかもうスタッフもキャストもいい加減嫌になってたんだろうな。……分かるよ、その気持ち。


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