es「エス」

01年/独 監督:オリバー・ヒルツェヴィゲル 出演:モーリッツ・ブライブトロイ、クリスティアン・ベッケ


 面白かったー!けど二度観る気はしないな…という映画。だってこんなの何回も観たら胃炎になっちゃいますよ!ドイツ人って暗い…とつくづく思いながら映画館を後にした次第。カップルも結構来てたんですが上映終了後皆一様にゲッソリ無言でしたね。どうせ観賞後円山町でも行こうとしてたんでしょうがソノ気は萎え萎え決定ですな。いい気味だ!

 しょうのない僻みは置いておいて、まーおっかない話でした。1971年にアメリカはスタンフォード大学で実際に行われた、新聞広告で無作為に集められた人間がこれまた無作為に「囚人」と「看守」に分けられて二週間過ごすという心理実験を基にして作られた映画です。実際の実験では看守役の暴力がエスカレートしたり、囚人役の人間が無気力・無個性など精神病の症状を表し始めたので一週間で打切りになったそうな。

 映画の中でも基本的な設定は同じですが、一応主人公、仇役、協力者、恋人などお話ぽいキャラクターが揃っています。主役のタレクは元ジャーナリストの囚人役で、この前例を見ない心理実験を取材しようと超小型カメラを持って参加。この小型カメラからの主観映像がちょっとおもろい(昨今じゃありがちと言えばありがちな画だけど)。性格はもちろん反体制的で挑戦的(じゃないと主役になれないからネ!)その他看守役のリーダーになるサイコなスチュワードとか、タレクと同じ房に入る謎めいた男(マルコヴィッチ似)、気弱な友人(ロビン・ウィリアムズ似)などなどが登場。そして意外と存在が大きかったのがタレクの恋人ドラ。彼女は唯一実験から完全に離れた場所に入いる主要人物で、出て来る度に画面が刑務所(に模した実験場)から外界に切り替わるので最初はこの女いらんなあー刑務所の中だけで話進めろよ!と思ったんですが、彼女のシーンが無かったらムサ苦しい&切羽詰まり過ぎて「映画として」楽しめなかったね…。フィクション部分担当というか。彼女無しバージョンもちょっと観てみたいが、多分もっと救い難い程鬱な気分になっちゃったであろう。

 最初は高額な報酬を得るためのごっこ遊び気分だった被験者たちが次第にそれぞれの「役柄」に囚われて、やがて常軌を逸し始めるその経過描写がイイ。暴力は爆発だ!本当何かにちょこっと背中を押されてしまえば、人は何でも出来てしまうのだなーと。あと制服の持つ威力という物を強く感じましたな。明るいエルビスのモノマネ芸人が青い制服を着ただけで恐ろしく威圧的になり、スモックみたいな服をノーパンで着せられた囚人役の人たちは次第に感情を失ってしまうの。恐いよー。実話が元だってのが一番恐いね。アイヒマン実験の話を聞いた時も恐怖しましたが、同じようにやっぱ性善説って嘘じゃん!と大陸の方向にツッコミを入れたくなりましたです。私だって看守になったら気に入らない奴ニ、三発殴りそうですもの。暴力に凄く弱いタチなのよー(するのもされるのも)。

 話はほとんど一つの建物の中で展開。しかしカメラの動き自体は(小型カメラ主観映像とクライマックス以外は)しごく落ち着いているのに、いちいちアングルが凝っててイイ意味で凄く不安な気分になります。一秒たりとも退屈できない!音楽はちょっとコケ脅かし入ってて、しかもパパローチ?あの辺りの音楽がエンドロールで流れてOI!とか思いましたが観て損はなし。ただしコンディションのいい時にね!しかしあの病院に非常ボタンは無いのか?(他、かなり大きなツッコミポイントいくつか有りですがそれは観た方のお楽しみ&解釈で)

 余談ですがやはり「監獄ものではチンコは見えてもかまわない」というのは都市伝説ではなく真実だったのですね。景気よくブラブラしてらっしゃいました。でも一番見たい人(謎のマルコヴィッチ)のが見れなくて二重にしょんぼり。人生は、人間はままならんなあ。そんな生物の不条理を感じさせてくれた面白い映画でした。


BACK
SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO