マーティン 呪われた吸血少年

77年/米 監督:ジョージ・A/ロメロ 出演:ジョナサン・アンプラス、トム・サヴィーニ


 ビデオにて。常日頃ロメロ神の映画には色気がねえと騒いでいた私ですが、ごめんなさい撤回します。吸血鬼という題材のせいもあるのかもしれませんが、この映画はもう全編息詰まるようなエロさに溢れています。それも『クラッシュ』のエロ気に近いエロ。 

 舞台はロメロ神映画でおなじみのピッツバーグ。なんですが全体的に青みがかった画面で、一瞬英国映画かと思うくらい薄ら寒い印象。主人公のマーティンはそこに住む叔父のクーダの元に寝台列車でやって来ます。この寝台車でのシーンはのっけから最高に緊迫感溢れてます。そのまま映画はこの不安感と緊張感を最期まで引きずっていく。そんでもってまずこのマーティン役のジョナサン・アンプラスがたまらんのよ。普段いわゆる典型的美少年など滋賀にも高知にもかけない私ですが、彼には完璧参ってしまいました。柔らかく巻いた長めの金髪に真っ白の肌&折れそうな細身という字面で説明すると全く面白くないルックスなのですが、飾りっけのない表情と吹けば飛びそな繊細さがたまらんです。スタイルも少年と青年の端境期特有の不安定な背骨と鎖骨が云々。とにかく美しいのよ〜。無敵の中年趣味を誇っていた私をも篭絡させた恐ろしい子です。フィルモグラフィを見たら予想通りメジャー寄りではほとんどロメロ神の作品にしか出演しておらず、IMDbほじったら『死霊のえじき』にも出てた模様。もしかしてアレか?ローズに×××されちゃう科学者。印象薄かったよ!時って残酷。

 ストーリーを説明してもしょうのない映画なのでその辺りは省きますが、表題通りマーティンは人の血を吸う(というか浴びる)吸血少年です。色々なホラー映画レビューを見ると、彼は本物の吸血鬼というよりそう思い込んでしまっている精神病患者なのではという意見が多いんですが私は所々インサートされるモノクロ映像(ここでのアンプラスも即死もんの美しさ)やクーダ爺さんの言動から、彼は伝統あるほんまもんの吸血鬼なのではと思いました。逆にマーティンは自分が吸血鬼だという事実を否定したがり、ただの病気なんだと繰り返し言う。狂信的カソリックであるクーダ爺さんはドアにニンニクを吊るし事あるごとにマーティンを「のすふぇ〜らとぅ〜」と罵るのですが、マーティンはエクソシストも魔力も信じない。

 普通吸血鬼というとキバ生やして乳のでかい美女の首筋に噛み付いている絵が浮かんできますが、マーティンは睡眠薬を注射して相手を眠らせカミソリで腕を切る。この手口が凡百の吸血映画とは一線を隔している一つの要因かと。吸血という古くさい題材にケミカルな小道具を持ってくるのがイイ(つくづく理系のエロスに弱い私)。そしていざ吸血する時は、返り血で汚さないために服を脱いで獲物に覆い被さっていくのです。…エロい!やればできるじゃねえか神!でもよく考えたらこれもまた少しも恋愛くささは無いのだった。それにエロいと言ってもあくまでも雰囲気は救いがたく陰鬱で、なんと言っていいか分からんが全編にわたって道程(変換プリーズ)のうっとうしさに満ちている。大体殺してますし。ピッツバーグには空が無い。やっぱり吸血鬼映画というより、自分の欲望や性癖をコントロールできない青年のダークネス青春映画という観方が正しいのかも。ついでに男女美醜の差なく吸血します。このへんは先輩格である吸血鬼ノスフェラトゥと一緒。まああれは監督がホモだからな。

 神の映画のラストシーンというのは大体問題が何の解決もしないままスパン!と切られてしまい、観客は放り出されたまま追い討ちをかけるようなエンドロールで後味の悪い思いをさせられるというのが定石ですが、『マーティン』のラストシーンはそれの最骨頂。『ナイトオブ〜』とどっちか、というくらい後味悪いです。あと「田舎もんはタチが悪い」「宗教はハマっちゃだめ」というメッセージも受け取りましたぜアナーキー・イン・ピッツバーグのロメロ神。

 あとビデオに入っていた予告編がおもろかった。特に『クレイジーズ』はいい年してちびりそうになるくらいおっかなかったです。『ナイトオブ〜』はあの「ないっ!………おぶざ、りびんぐ、でっど!」の声と共に「二階の死体」が何度も映されて最高に気色悪かった。


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