私家版

96年/仏 監督:ベルナール・ラップ 出演:テレンス・スタンプ様、ダニエル・メスギッシュ、マリア・デ・メディロス


 新世紀も美老道(ミロード)を絶賛驀進中のテレンス・スタンプ様主演映画(ビデオタイトルは「私家版/復讐のページ」)。監督はベルナール・ラップ。『趣味の問題』の監督さんです。あれもヤらしい映画でしたな。原作は大のお気に入りだし『趣味の問題』も好みだったしで期待してたのですが…ん〜、先ず原作を先に読んじまったのは失敗だったかもしれない。小説では美しく自信に溢れた自惚れ屋の腐乱ス人ニコラと、彼を憎みながらもその魅力に抗えず奴隷のような生涯をおくっている醜い英国人エドワードというの設定なのですが(エドワードの一人称で物語は進む)、ブ男エドワードにテレンス・スタンプ様をキャスティングしてしまった事により、映画版はまったく違った雰囲気になってしまってます。

 確かにこの小説読んで、誰もが真っ先にエドワードとして思い浮かべるのはテレンス様だと思います。物静かな容貌の中に隠された燃えるような執念と冷徹な頭脳。英国人としての品の良さとアナーキストとしての危険さ。そして物語の中で重要な位置を占めているエジプトのエキゾチックな雰囲気にもぴったり。でもエドワードは常にニコラにコンプレックスを抱き、人生を狂わせられ、卑屈になりきっている男なのだ。テレンス・スタンプにルックス・生き方においてコンプレックスを抱かせ、卑屈にさせる事ができる男ってどんなだ?

 案の定該当する俳優はいなかったらしく、ニコラ役はダニエル・メスギッシュをキャスティング。なんとなくぬぼっとした印象の人で、お世辞にも美しいとは言えん方です(でもここで中途半端な美形をキャスティングしなかったラップ監督は偉い)。この時点でエドワードのキャラクターは無能作家であるニコラを上手くあしらう美貌の英国紳士に変化。いや俳優によって原作のキャラクターが変わったりストーリーが変化するのは当然だし、それが原作付き映画の醍醐味でもあるんですが、この『私家版』は陰と陽の2人の人間の対比が大きな軸。のはず。たぶん。でも永遠のテオレマ、テレンス・スタンプはすんばらしい名優だが、彼には決定的に「卑屈」や「汚れ」が似合わない。というか演じられないと思うの。汚れ役やってても異様に気高いんですもん(スーパーマンとかに出ていてさえも)。復讐してるというか単に弱い物いじめしているようにしか見えーん。

 あ、でもつまんなかったかというとそうでもないッス。ほんとよ。ただ原作に頼りすぎてて読んでなかったら「?」になっちゃうだろうなという個所がいくつか出てきたのはいただけなかったが、『イギリスから来た男』の腐乱ス版だと思えば楽しめましたよん。雰囲気と画面はとても良かったし。でもラップさん、あの女はどう考えてもいらないと思うッス。


BACK
SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO